登熱に重要なケイ酸と加里

1.水稲の開花・登熟に背番号

稲の穂を良く見て下さい。中心になる一次枝梗と、枝分かれしている二次枝梗があります。


「開花の順序」
その特徴 …

1.ついている籾は合わせて100粒あまり。
2.その籾の開花には決まった順番がある。稔り方にも差が出る。

 天候の悪い時は強勢頴花だけは稔るが、弱勢頴花の登熟は劣り、くず米、青米となりやすいのです。
 これからの米づくりは、弱勢頴花でも十分稔実できるようにしていくことが、収量、品質にとって重要になります。

2.加里は働くトラック野郎

 籾殻と、その中の玄米の善し悪しは不可分の関係です。籾殻が生長して、そこにいったん集積した炭水化物は玄米に転流していかなければなりません。

 籾殻の養分が米粒に移行するのに、加里がかかわります。

登熟が終わるまで、加里の集積の高いもの → 稔実籾
登熟後期に加里の保持が低下しているもの → 不稔籾になりやすい

 したがって、加里は窒素やリン酸と違って、かなり生育の後期まで供給されなければなりません。
 加里の効果は作物体内の膨圧も維持するので、旱ばつへの抵抗性を強め、炭水化物の合成にも関与します。そして全体としての籾のサイズを大きくするので、二次枝梗の 籾の発達も高め、増収・品質向上に寄与します。

 加里は水稲の栽培全期を通じて休みなく、適切な量を連続的に吸収させることが大切な成分です。

3.ケイ酸は稲の米蔵のガード役く

 籾殻は稲の器官の中で一番ケイ酸の含量が高く、籾殻の外気に触れる部分に密度が高く 集積しています。ケイ酸が皮膜を作って籾の中の水分の蒸散を防ぐ働きをするなど、籾殻の水分代謝と深く関与し、稲の生命を守るのです。
 したがって、ケイ酸の稲体への影響は、稲生育前半の栄養生長期よりむしろ後半の生殖生長期が大きいのです。
 この時期にケイ酸が不足すると穂の形成は抑えられ、不稔実が多く、籾に病原菌がつきやすいが、多量にあると良化します。
 幼穂形成期から穂揃い期にかけてのケイ酸吸収の多少は、良食味米生産を左右すると言っても過言ではないし、ケイ酸はいくら多く与えても過剰障害がでない唯一の成分なのです。

4.吸収阻害を受けやすいのも 加里とケイ酸

 水稲の生育過程では加里とケイ酸はむしろ後半の段階で大事な役割を果たしているのですが、この二成分は吸収阻害も受けやすいのです。

1. 夜間、高温になると吸収阻害を受けるのが加里、ついでケイ酸。平成11年の高温で乳白米が多発しましたが、
   土づくり肥料をやった地区は軽減されたと報告されています。
2. 日照不足でも加里とケイ酸は吸収阻害を受ける成分の最たるものです。

根腐れを起こした稲、夜間の気温が高い地方の稲、日照不足にある稲などは加里とケイ酸の吸収が抑えられます。
 したがって根腐れなどが発生する以前に加里とケイ酸を施用しておくことで、稲は地上部(葉身、葉鞘)から地下部(根)へ炭水化物を転流できるので、安定的な米の生産には欠かせない成分なのです。

5.けい酸加里で登熟がよくなる

 稲の登熟を高めるためには、弱勢頴花の稔実歩合も高める必要があります。けい酸加里肥料を施用することで、稲は光合成を高めるので、稲の稔実がよくなり、一次枝梗の稔実歩合も高まりますが、特に二次枝梗で効果が大きく現れ、収量も高まります。

 そして、く溶性加里が生育後期までゆっくり稲体に吸収されることで、上位葉の光合成を高めます。止葉の呼吸量をみると、けい酸加里を与えた田では高くなっています。それは葉で作られた炭水化物を籾へ転流させるので、さらにそのあとを満たすための活動をするからとみられます。良食味米生産に当たってのポイントです。